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犬に「強く叱る」は本当に正解?

国際的な研究が示す嫌悪刺激トレーニングのリスク


犬との暮らしにおいて、いわゆる「しつけ」は、避けて通れないテーマです。

吠える・噛む・いたずらなどの行動に直面したとき、「強く叱れば直る」「上下関係をはっきりさせることが大切」 といった考え方を耳にすることもあります。


しかし、最新の国際的研究はこうした考え方が科学的根拠を欠き、犬の福祉を損なう危険性があることを示しています。

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2025年に発表された調査では、オーストラリア・イタリア・英国を中心とした英語圏の飼い主・元飼い主224人が、犬や猫の行動に関する信念について回答しました。

質問は、例えば次のような内容です。

  • 「犬は誰がボスか理解しなければならない」

  • 「恐怖症を治すには怖いものにさらせばよい」

  • 「猫は手がかからないペットである」

結果は次の通りです。

  • 「犬は誰がボスか理解しなければならない」:賛成42.2%/反対49.3%

  • 「恐怖症を治すには怖いものにさらせばよい」:賛成20.0%

  • 「軽い体罰は適切な方法だ」:賛成5.8%

  • 「新聞紙で叩いても問題ない」:賛成1.3%

  • 「猫は手のかからないペットである」:賛成28.7%


つまり、多くの飼い主が科学的に正しい知識を持ち始めている一方で、上下関係を重視する考え方や罰の使用を容認する声が、いまだに一定数残っていることが明らかになりました。


スペインの研究でも同様の傾向

さらにスペインで行われた大規模調査(Menor-Camposら, 2024)でも、「犬は誰がボスかを理解する必要がある」と考える飼い主が約40%、「罰を与えれば恐怖心を克服できる」と考える飼い主が約20%いました。つまり、この誤解は日本や一部地域だけでなく、国際的に共通して残っているのです。


嫌悪刺激トレーニングの危険性

「ボスであることを示すために叱る」という考え方は、犬を従わせるために罰や強制的な手法(嫌悪刺激)を選択するきっかけになりがちです。しかし科学的研究は一貫して、こうした方法が犬に恐怖・ストレスを与え、信頼関係を損ない、攻撃性を悪化させる可能性を報告しています。一方、正の強化(望ましい行動を褒めて強化する)を基盤としたトレーニングは、犬の福祉に良い影響を与えつつ行動改善に有効であることが示されています。


飼い主の気持ちに寄り添うことから始めよう

嫌悪刺激トレーニングを信じている飼い主に出会ったとき、専門家が頭ごなしに否定すると対立を招きかねません。まずはなぜそう考えているのか」を聞き、寄り添うことが大切です。そのうえで科学的な知識をわかりやすく伝え、犬と飼い主双方に優しい方法を一緒に探していくことが求められます。


実践的に学べるセミナーのご案内

こうした現場対応力を高めたい方に向けて、飼い主対応に特化した実践セミナーを開催します。嫌悪刺激を信じている飼い主との対話のコツや、信頼を築きながらポジティブトレーニングを進めるスキルを学べます。



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