「ムギ」「モカ」「ラテ」にみる、美味しそうな名前の選び方
- KAORU ITO
- 5月28日
- 読了時間: 3分
ー日本人が「おいしそうな名前」を愛犬につける理由を考えるー
2025年5月27日、ペット保険会ペットアイ損害保険株式会社が最新のペットの名前ランキングを発表しました。「ムギ」が5年連続で犬部門第1位を獲得し、「モカ」「ラテ」「マロン」「チョコ」といった食べ物に由来する名前が上位にランキンインしています。
猫の名前でも「ラテ」や「ムギ」が上位を占め、やはり「かわいくておいしそうな名前」が人気を集めているようです。
このランキングからも、日本では「可愛らしさ」と「食べ物」が命名の中心的要素になっていることが伺えますね。
かくゆうわが家の愛犬も「がんも」と「ちくわ」。しっかり和風食べ物由来です😅

◾️「かわいい」と「おいしそう」が重なる感覚
日本語には「もちもち」「ふわふわ」といった擬態語が多く存在し、「質感」や「感情」を音で表す文化が根付いています。「おもち」や「マロン」といった名前は、見た目や触り心地だけでなく、愛犬への“かわいさ”の感情をストレートに言語化したものともいえます。
食べ物の名前は単にユーモラスなだけでなく、五感と結びついた情緒的な愛着表現なのではないでしょうか。
◾️家族の一員として「ごはん」にちなんだ名前を
日本人にとって「ごはんを一緒に食べること」は、家族の象徴的な営み。そのため、食べ物の名前をペットにつけることは、親しみや一体感の表現とも捉えられます。
「こむぎ」「きなこ」「おにぎり」――こうした名前には、家族の一員として愛犬を迎える気持ちがにじんでいます。
◾️呼びやすさ・響きの心地よさも理由に
「ムギ」や「ラテ」など、食べ物由来の名前は短く、呼びやすく、音の響きも心地よいものが多いのが特徴です。
特に日本語は語頭に柔らかい子音を持つ単語が“かわいく”聞こえるため、自然と名付けにフィットする単語が食べ物に多いという言語的な理由も考えられます。
◾️欧米との違い:人名 vs. 食べ物
一方で、欧米諸国では「Luna」「Bella」「Charlie」など、人間の名前がそのままペットの名前になることが一般的なんだそうです。これは、ペットを“擬人化”し、家族の一員として位置づける文化が根底にあると言われているとか。
対照的に、日本では人名をペットに与えることにためらいを感じる傾向があり、その代わりに「人間とは違うけれど特別な存在」として、食べ物や自然にちなんだ名前が選ばれます。
この違いは、単なる流行ではなく、動物観・家族観・言語観の文化的な相違を映し出していると言えるのではないでしょうか?
◾️名前にこめられた、小さな物語
愛犬の名前は、単なるラベルではなく、飼い主の愛情や家庭の文化が宿る言葉です。
「ムギ」や「チョコ」と名付けられた犬たちは、どこか親しみやすく、そしてちょっと“おいしそう”。その名前の裏には、やさしくて、あたたかい家族の風景が隠れているのかもしれません。

トレーナーの視点から:「名前が犬の行動に与える影響は?」
犬の名前は、ドッグトレーニングの点からもとても重要な要素です。
例えば、「ココ」や「モカ」などの短くてはっきりした名前は、呼び戻しや指示の伝達がスムーズです。
また、行動形成の点からも柔らかい音の名前は、犬の警戒心を和らげやすいと感じます。名付けは、単なる記号ではないと感じています。犬にとって「自分の名前を聞く」ことは安心感や注目の合図でもあり、行動修正や感情コントロールの第一歩でもあるからです。
PD-TENでは、犬と人との関係性に関する文化的・心理的視点も大切にしています。
名前から見える「共に生きる(共生)」というペットとの在り方をこれからもみつめていきたいと思う今日この頃です。
あなたの愛犬の名前の由来は、なんですか?
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