雄の子犬を迎えると「去勢」については、考えなければならないと思います。
去勢手術とは、医学的に「睾丸摘出術」と言い精巣を手術で取り除くことを指します。
メリットは、男性ホルモンに関連する病気「精巣腫瘍」や「肛門周囲腺腫」などの病気を予防できることやマーキングが減るかもということが言われていますが、最も大きなメリットは、交尾欲によるストレスを予防することにあります。
繁殖を望まないのであれば、去勢はしたほうがいいということはわかります。では、タイミングはいつがいいのか。獣医師によっては、早い方がいいと精巣が陰嚢に触知できるようになったタイミング(2ヶ月齢くらい)で去勢手術を行うそうですが、生後6−12ヶ月以内に行うことを推奨することが一般的ではないでしょうか。
ところが、最近の研究では、犬種や体重によっては関節疾患や腫瘍が増えるという報告もあり、特に大型犬・超大型犬では、やや遅めに避妊去勢手術をした方がいいらしいということが示唆され始めているようです。
では、一体いつがいいのか!と思っていたら、2020年の動物臨床医学の雑誌で避妊・去勢手術について特集されていましたので、ご紹介します。
そこでは、これまでの研究報告を基に、避妊・去勢手術のリスクとベネフィットについてまとめられていました。ぜひ、皆様も一読されてみてください。
その記事は、猫と犬について書かれています。ここでは、特に雄犬について簡単にまとめます。
雄犬の場合、早期去勢には疾患予防の利点はなく、5.5ヶ月齢未満の去勢では攻撃性や無駄吠えのリスク増加が示唆されいます。また、大型種では、関節疾患や腫瘍のリスク増加が示されるそうです。例として、ゴールデン・レトリーバーであれば12ヶ月齢未満、ラブラドール・レトリーバーであれば6ヶ月齢未満、ジャーマン・シェパードであれば12ヶ月齢未満、ロットワイラーであれば12ヶ月齢未満で去勢してしまうと、疾患リスク(股異形成、リンパ腫、血管肉腫など)が高まるため、それ以降で去勢手術を検討した方がよいとのことです。
もちろん、個体や環境によっても色々だと思いますが、早期がいいということでもないということは、覚えておいた方がよさそうです。
PD-TENでは、こういった基本的な情報の共有をしていきたいと思っています。
勉強会では、業界のエキスパートによる解説を行なっていますので、宜しければ遊びに来てください。
参考資料:
伊東輝夫、避妊・去勢手術の温故知新〜日常化している手術を再考する〜2.エビデンスから避妊去勢の時期、方法、益と害を再考する 動物臨床医学 29巻(2020)4号
Comments