クリッカートレーニングは、古典的条件付けとオペラント条件付けの原理を利用して、犬の行動頻度を上げたり下げたりするトレーニングを意味します。クリッカートレーニングは、力で強制したり、体罰を与えることなくトレーニングをする方法として、1990年くらいから広まったようです。
理論的には、二次強化子理論やマーキング理論が当てはまるのかと思いますが、犬に対するトレーニング効果の科学的根拠を確認したことがなかったので、ちょっと調べてみたところ😯!
イタリア トリエステ大学の研究者が、「クリッカー+トリーツ」vs.「褒め言葉(ブラボー)+トリーツ」vs. 「トリーツのみ」でクリッカートレーニングの有効性を検討した研究をご紹介します。
方法:51頭を使って「クリッカー+トリーツ」、「褒め言葉(ブラボー)+トリーツ)」「トリーツのみ」の3グループに分けます。(17頭×3グループ)。これまでに犬も飼い主も軽いトレーニング以外はトレーニングをしていません。おやつは、ソーセージかチーズを使いました。褒め言葉(ブラボー)は、穏やかな声で発しました。トレーニングの課題として、パンを保存するブレッドボックスを鼻先で開けるというものを設定し、犬の学習速度を比較しました。
評価は3段階で行いました。
合格までの時間…ブレッドボックス(プラスチック)を開けるという行動を10セッション中8回行ったら合格と設定。
再現性(記憶)確認…1のトレーニングから1週間後に、同じ課題をしてみる。5回のうち3回を合格と設定。
般化(学習応用)の確認…1で使用したブレッドボックスとサイズ、形状、素材(木)が異なるブレッドボックスを使って、1と同じトレーニングを行う。
結果:1、2、3ともに、グループ間で有意な差はありませんでした。
研究者は、時間ごとの試行回数やいくつかの指標についても計算していますが、3グループで差はなかったことから「学習は、トリーツの報酬を期待する音の種類とは無関係のようだ。さらにクリッカーの音や褒め言葉(ブラボー)の有り無しに関わらず、学習は同じであった」と述べています。
この結果は、研究者たちの予測に反したことだったようですが、クリッカーを使っても使わなくても効果は同じだったということが示されました。
この研究では、どのグループでも犬の大好きなソーセージかチーズを使っていますので、犬のモチベーションが高かったというのも、結果に影響しているかもしれません。また、クリッカーによる報酬マーカーは、正確なタイミングが重要なので、それについても今後研究する必要があるとも言っています。
以上のような研究結果はありますが、クリッカートレーニングを通して飼い主さんがトレーニングについて知識を深めているプロセスは大事なのではないでしょうか。
トレーニングに関わる研究について、みなさんと深読みしあいたいのが、PD-TENです!
きっと楽しいですよ。
カンファレンスへの参加、心よりお待ちしております!
参考資料:
Applied Animal Behaviour Science Volume 184, November 2016, Cinzia Chiandetti, Silvia Avella, Erica Fongaro, Francesco Cerri, DOI:10.1016/j.applanim.2016.08.006
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