アメリカのフロリダにあるシェルターの子犬を使ってクリッカートレーニングの効果について検証してみた。
クリッカートレーニングは、オペラント条件づけの「正の強化」を基本にしたトレーニング方法ですよね。「オスワリ」や「フセ」などの目標とする行動や動作を行なった瞬間にクリッカーを鳴らして、トリーツをあげるという今時なトレーニングです。
今回はシェルターにいる過去にトレーニングを受けた経験のない犬を対象に、クリッカートレーニングの効果について検証した研究をご紹介します。
この研究では2つの課題を設けて行なっています。
課題1では、「ステイ(マテ)」を7段階に分けて教えていきます。50回教えたところで、ステップ4までできた犬の割合を比べてました。最初に30頭のシェルターの子犬を①〜③の3つのグループに分けます。①はクリッカー→一次強化子(トリーツ)、②は声で褒める→一次強化子(トリーツ)、③は、一次強化子(トリーツ)のみに分けて行いました。
課題1.「ステイ」のトレーニングステップ
1.その場で1秒
2.その場で5秒
3.下がって5秒
4.下がって10秒
5.下がって20秒
6.下がって30秒
7.下がって40秒
結果は、①が27%、②が36%、③が70%と、トリーツだけでトレーニングした方がクリッカーや声で褒めるよりも高い達成率を示しました。
課題2では、「バイバイ」を8段階に分けて教えていきます。こちらも50回教えたところで、ステップ4までできた犬の割合を比べました。こちらは60頭のシェルターの子犬を使いました。
結果は、①が40%、②が50%、③が45%とどれも同じような達成率でした。
課題2.「バイバイ」のトレーニングステップ
1.なんでもいいから前足を動かす
2.前足を地面から浮かせる
3.前足を浮かせてトレーナーの手に近づく
4.前足をトレーナーの手の平(上向き)に乗せる
5.前足でトレーナーの手の平(前向き)に触れる
6.トレーナーの手の近くで前足を浮かせる
7.トレーナーの手から6インチ(15cm)地点で前足を浮かせる
8.6インチ(15cm)地点で前足を浮かせたらトレーナーはバイバイする
以上の結果により、クリッカートレーニングは学習促進効果がないだけでなく、課題によってはクリッカートレーニングは逆効果になる可能性もあるということが示されてしまいました。
クリッカートレーニングでは、クリッカー音の「カチッ」とトリーツを関連付ける「クリッカーチャージ」を下準備として行う必要があります。声で褒める場合も同様です。これは、古典的条件づけを通して行われます。本研究では、この点が不十分であった可能性もあるのでは、と思ったりします。
今の所、クリッカートレーニングによる学習効果を評価した研究では、あまりいい結果を示していないような気がします。見つけられていないだけかもしれませんが、なんだか不思議ですね。
Nicole R. Dorey, Alexandoer Blandina, Monique A.R. Udell. Clicker training does not enhance learning in mixed-breed shelter puppies (Canis familiaris). Journal of Veterinary Behavior, Volume 39, September–October 2020, Pages 57-63
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