おいしい牛乳ってなんだろう
3月20日に愉快な仲間と共に、岩手県の岩泉町というところにあるなかほら牧場を体験してきました。
なかほら牧場は、日本では珍しい「山地(やまち)酪農」を実践している牧場で、文字通り山の中で牛を飼う酪農です。もともとは、国内に放置された山林を管理する手段として考えらえたそうです。なんと日本国土の7割は、未利用のまま放置された山林が占めており、そこには牛の食糧となる野シバなどの在来野草がたくさん生えています。そこで、林業で手間のかかる下草刈りの作業の代わりを牛にやってもらおうという発想から始まりました。
鬱蒼とした森*に牛を放す→牛が下草の野シバを食べる→伐採するための道ができる→伐採する→日光が土まで届くようになる→野シバが生える→牛を放す→牛が自由に歩き回り草を食べる→美味しい乳を出す
*鬱蒼とした森は、地面に光が届かず土が痩せて貯水力も低くなるそうです。
鬱蒼とした森は、見渡す限り草原の山に生まれ変わります。見晴らしが良すぎて、時として畑や家畜を食い荒らす熊などの野生動物も現れなくなりますし、野シバの絨毯によって山崩れも防げます。また、牛たちは、自由に放牧されるので、人間の労働力も軽減されますし、飼料代の節約されます。
もちろん、デメリットもあります。新規酪農スタイルを地元が受入れ難いなどの悩ましい課題もありますが、大きな問題点は、乳量が安定しないのと一般的な酪農牛乳よりも脂肪分が低いという点です。現行の制度では、脂肪分が3.5%以上ある生乳の方が人気があり買取も高い、一方、3.0%程度の山地酪農の生乳は、買取価格は低くなってしまうそうです。運動もほとんどできずに飼料だけを食べ、休むスペースも与えられないで育てられた牛の生乳の方が買取価格が高く、草を食べ放牧されて健康的に育った牛の方が買取価格が低いというのは、なんだか矛盾していると思いませんか?
幸せな牛から出る乳がおいしい牛乳になるはず!
そういった牧場では、自前で生乳加工を工夫して付加価値をつけるなど、経営を持続させようと努力されています。それらデメリットが、山地酪農を実践したいけどできない人の壁となり、途中で諦める人がいるとか。
中洞先生曰く、スイスなどの欧州国では、食料自給率を脅かすようなこと(戦争など)に備えることを目的に牛を放牧し山を整えているとのことでした(いざとなれば、牛を食べ、草原を畑に変えることができる)。日本の食料自給率は、40%を切ります(先進国で最低。カナダ、オーストラリアは200%超。アメリカも100%超)。日本は、人の食べ物だけでなく畜産動物の飼料も海外に依存している状態です。実際、新型コロナウイルス感染症拡大やロシア情勢の影響でさまざま食料品の値段が上がりつつあります。
久しぶりに、いろんなことを考えさせられた1日でした。山地酪農を実践している牧場では、体験できるところもあります。
暖かくなってきましたし、愛犬とともに牧場に行ってみませんか?
犬を通して、自然循環や食料自給率問題についても、考えるようなったアタクシなのでした。。。
参考資料:
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