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困ったとき、あなたの犬はどうする?

〜最新研究から見えた”性格”と”信頼”のカタチ〜


わが家には、盲導犬を引退したゴールデンレトリバーがいます。

困ったとき、彼女はいつもこちらの顔をじっと見つめてきます。

例えば大好きなおもちゃが椅子の下にあるときなのです。そんな時「ねぇ、どうしたらいいでしょう?」そんなふうに問いかけるような目をしてきます。

この視線の意味をある研究が少しだけ教えてくれた気がします。


🧪 解決できない課題と犬たちの反応

イタリアの研究者たちは、犬たちに“どうしても開けられないおやつの箱”を与えました。それは、犬自身の力では絶対に解決できない「不可能な課題」です。

そんな状況で、犬たちはどんな行動をとったと思いますか?

  • ある犬は、すぐに飼い主の顔を見上げました。

  • また別の犬は、必死に自力で箱を開けようと挑戦し続けました。

実はこの行動の違い、犬の「性格」や「経験」によって生まれているようです。


🐶 AAI犬は「人に頼る」力をもっている

この研究では、「動物介在介入(AAI)」に使われる犬たち――つまり病院や学校などで人の心を支える活動をしている犬――も調査対象に含まれていました。

AAI犬は、人と接する訓練を受けた犬たちです。彼らは、困ったときにすぐに人に注目し、「助けてほしい」と無言で伝える行動が多く見られました。それは、“人を頼ること”が自然に身についている”からかもしれません。


👁 視線が絆を深める? ― 菊水先生の研究より


こうした犬の“視線”については、日本の麻布大学・菊水健史先生も注目すべき研究を発表しています。

飼い主と犬が見つめ合うと、オキシトシンと呼ばれる“愛情ホルモン”が双方に分泌されることが明らかになりました。これはまるで、人間の親子の絆と似たしくみ。犬が私たちの目を見つめるのは、「信頼」や「安心感」を伝えようとしているのかもしれません。

だから、困ったときに人を見つめる犬の行動には、行動科学だけでなく生理学的な裏付けもあるということになります。


🧭 一方で、自立心の強い犬もいる

一方、一般のペット犬の中には、「自分で何とかしよう!」とがんばり続けるタイプもいました。こうした犬は、飼い主に視線を送る回数が少なく、「人に頼るより、自分で解決したい」と考えているようにも見えます。

つまり、犬にも性格があり、人への頼り方にも個性があるということです。


💡 飼い主として、できること

私たちができるのは、「その子の性格に合わせて寄り添うこと」。

  • 人をよく見る犬には、声をかけたり共感したりして、安心感を。

  • 自立心の強い犬には、チャレンジの達成感や、自信を高める関わり方を。

どちらが良い・悪いではなく、それぞれの「得意な関わり方」を理解してあげることが、信頼関係を築く第一歩です。


🌱 彼女の視線の意味

冒頭で紹介した、わが家の元盲導犬。彼女が静かに見つめてくるその視線は、きっと「信頼しているよ」というサインなんだと、今は思います。この研究を読んで、あの目に込められた思いを、少しだけ理解できた気がしました。


犬との暮らしは、小さな気づきの連続です。そしてその気づきが、私たちの関係をより深く、やさしくしてくれるのかもしれません。



📚 引用・出典一覧

  1. Piotti P, Albertini M, Trabucco LP, Ripari L, Karagiannis C, Bandi C, Pirrone F. Personality and Cognitive Profiles of Animal-Assisted Intervention Dogs and Pet Dogs in an Unsolvable Task.Animals. 2021;11(7):2144

  2. Nagasawa M, Mitsui S, En S, Ohtani N, Ohta M, Sakuma Y, Onaka T, Mogi K, Kikusui T. Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds.Science. 2015;348(6232):333–336.

  3. Murata K, Nagasawa M, Onaka T, Kikusui T. Dogs' tears: Human-like emotional tearing in dogs caused by positive interaction with owners.Current Biology. 2022;32(18):R915–R916.

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